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最高裁判所第三小法廷 昭和46年(オ)555号 判決 1973年3月06日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人東里秀の上告理由第一点について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の認定によれば、本件土地賃貸借契約の締結に際しては、被上告人において将来本件土地の一部をみずから使用する予定であつたため、その西側八・四七坪(二七・九九平方メートル)の部分の賃貸期間を一〇年と定め、上告人吉俣和明ないしその経営する上告人株式会社よし乃屋呉服店が地上に建築する建物のうち、右八・四七坪の土地上に存在する部分につき、一〇年経過後にこれを区分遮断して時価(ただし一二万円を限度する。)をもつて被上告人に売り渡し、かつ、これをその敷地の右八・四七坪の土地とともに明け渡す旨の特約がなされたものであるところ、被上告人は、右一〇年の期間経過後に、上告人和明に対し金一二万円を提供したがその受領を拒絶され、同上告人から右特約による債務の履行を受けなかつたので、その債務不履行を理由として本件土地全部につき賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたというのである。このような事実関係によれば、原判決が右契約解除の理由として認定した上告人和明の債務不履行とは、賃貸借契約に付せられた右特約により同上告人が被上告人に対して負担した、右建物部分を区分遮断して売り渡すとともに賃借土地中右八・四七坪の部分を返還すべき賃貸借契約上の債務の不履行であると解される。そして、本件賃貸借契約が締結されるに至つた経過その他原判決の確定した事実関係のもとにおいては、右特約に基づく上告人和明の債務は、本件土地賃貸借の目的を達成するについて重要な意義を有するものであることが明らかであるから、右債務の不履行は、賃貸借契約上の債務の重要な部分の不履行にあたり、被上告人は、これを理由に、賃貸借契約全部を解除することができるものと解するのが相当である。したがつてこれと同じ趣旨によつて本件土地の賃貸借契約が終了したのもと認めた原判決の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第二点について。

第一審判決主文第二項は、原判決の理由と対照すれば、上告人株式会社よし乃屋呉服店を除くその余の上告人らに対し、本件建物中原判決の認定にかかる各自の占有部分からの退去を命じた趣旨に解することができないものではない。したがつて、第一審判決を維持すべきものとして控訴を棄却した原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第三点の所論は、本件上告人らに関係がないものと解されるから、これについては判断を省略する。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 田中二郎 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝)

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